おしっこが出にくい・時間がかかる
~前立腺肥大症のサインかも~
前回は、男女共通の悩みである「頻尿」についてお話ししました。今回は、中高年の男性にとって避けては通れないテーマである「前立腺肥大症(ぜんりつせんひだいしょう)」について詳しく解説します。
「若い頃に比べて、おしっこの勢いがなくなった」「キレが悪くてスッキリしない」——そう感じていても、年齢のせいと、不便な生活に慣れて(あきらめて)しまってはいませんか? 泌尿器科に受診していただくことで、快適な毎日を取り戻すことができるかもしれません。
1. 前立腺肥大症とは? ~おしっこの通り道が狭くなる病気~
前立腺とは男性がもつ臓器で、膀胱のすぐ下で尿道を取り囲むように存在しています。この前立腺は、年齢を重ねるとともに徐々に大きくなる性質があります。
前立腺が肥大すると、その中心を通っている尿道がギュッと締め付けられます。締め付けによって道が狭くなるため、おしっこがスムーズに流れなくなり、結果として以下のような症状が出てきます。
・おしっこの勢いが弱い、線が細い ・出始めるまでに時間がかかる、踏ん張らないと出ない ・おしっこが途中で止まる、出し終わるまでに時間がかかる ・最後、ポタポタと垂れてキレが悪い ・出にくさだけではなくて頻尿、夜間頻尿が起きる
これらの症状は、数年かけて徐々に進行するため、本人は意外と「これが自分の普通だ」と思い込んでしまいがちです。
2. 「放置」が招く、本当は怖いリスク
「出にくいだけなら、時間をかければ済む話だ」と放置してしまう方もいらっしゃいますが、泌尿器科医としてはここが一番の心配どころです。出にくい状態を放置し続けると、身体にはさまざまな悪影響が及びます。
【尿閉(にょうへい)】 ある日突然、全くおしっこが出なくなってしまう状態です。激しい痛みと尿意を伴い、救急受診が必要になります。飲酒後や、風邪薬の服用が引き金になることもあります。
【膀胱へのダメージ】 尿道が狭くなると、おしっこを押し出すために、膀胱に必要以上に力が加わり、それが長期間続くと膀胱の壁が厚く硬くなってしまいます。一度こうなると、元々の原因である肥大症を治しても、膀胱の機能が十分に回復しないことが多いです。
【感染と結石】 膀胱に常におしっこが残る(残尿がある)ことで、細菌が繁殖して膀胱炎を起こしたり、おしっこの成分が結晶化して結石ができやすくなります。
【腎機能の低下】 膀胱へのダメージは、そこにつながる尿管・腎臓へも影響を及ぼします。腎臓の働きが低下し、最悪の場合、血液透析が必要になります。
3. 治療について
前立腺肥大症の治療方法は様々ありますが、患者さんの状態や希望に合わせて、段階的に治療を進めていきます。
【まずは症状が軽い場合】 生活の工夫や経過観察します。自己判断せずにお気軽にご相談ください。
【次に「お薬」による治療】 多くの場合、内服薬からスタートします。狭くなった尿道を広げておしっこの通りを良くする薬や、前立腺の体積を小さくする薬があります。多くの方は、これらお薬の治療で、スムーズな排尿を取り戻すことができます。
【より根本的な改善を目指す「手術」】 お薬を続けても残尿が多い場合や、尿閉を繰り返す場合、また「一生薬を飲み続けるよりも、根本から治してスッキリさせたい」という希望がある場合は、手術を提案します。近年の手術(レーザー手術など)は、以前に比べて格段に身体への負担が少なく、入院期間も短くなっています。
4. 我慢を「当たり前」にしないために
「おしっこのために夜中に起きるのが嫌で、寝る前に水を飲まない」「外出先でトイレが長くかかるのが恥ずかしくて、出かけるのが億劫になった」——もし、おしっこが原因で生活が制限されているとしたら、それは「仕方のない加齢現象」ではなく「治療が必要な状態」です。
今抱えているおしっこの悩みが、前立腺肥大症によるものであれば、治療を受けることで快適な毎日が戻ってくるかもしれません。「自分のおしっこの悩みと似ている!」と思われた方は、お気軽にご相談ください。
【次回予告】 第4回は、前立腺肥大症の根本的な改善を目指す「手術治療」について詳しくお伝えします。特に石川病院で行っているレーザーを用いた治療法「HoLEP(ホーレップ)ホルミニウムレーザー前立腺核出術」に注目。体への負担を抑えつつ、長年の悩みを取り除く仕組みやメリットについて分かりやすく解説します。